共感を生むダイバーシティ広報のヒント

共感を生むダイバーシティ広報のヒント
 
 

多様性を包含しチームの力を引き出す、ダイバーシティ広報が注目を集めています。11月18日、共同ピーアールが運営する広報の学校では、「ダイバーシティ広報入門 」講座 を開催しました。質疑応答では、どうやって歴史ある男性が多い製造業において、トップのコミットメントを勝ち得るか、といった議論がされました。こうしたダイバーシティの最前線から、共感を生むPRのヒントを紹介します。

トップの多様性という経営課題

上場企業970社を対象にした、デロイトトーマツグループと三井住友信託銀行の共同調査によると、取締役に女性・外国人とも登用していない企業は48%、女性取締役がゼロは51%。上場企業の取締役会は多様化が遅れており、半数の企業が日本人男性のみで運営されている不均衡が明らかになっています。これを報じた11月21日の日本経済新聞は、「持続可能な開発目標(SDGs)対応の要請が強まるなか、企業経営に多様な視点を取り入れる必要が出ている」と論じています。

これに先立ち10月、東京都の「第3回 女性首長によるびじょんネットワーク」が開催され、30名を上回る国内外の首長と経営者が集いました。東京都知事の小池百合子氏は、「国際社会での女性活躍推進の課題を参考にし共有して、これまで以上に多様な視点を取り入れ、日本の女性の活躍を発展させたい」と意気込みを示しました。

3時間近くに渡る様々なセッションでは「不確実性の高いまさに今、画一的、上意下達的なリーダーシップが機能しなくなっているからこそ、多様な視点、女性の声が必要」という主張が共鳴していました。

アドビでアジア太平洋地域唯一の女性上級管理職を務めるマーケティング担当バイスプレジデント 秋田夏実氏は「クリエイティブに物事を考えていく上で、画一的チームは難しい。外からいろんな人の声に耳を傾ける、くみ上げる、といったことをしないと組織が成長しない」と述べました。

やわらかなリーダーシップの育て方

このイベントの2週間前、東京都・公益財団法人東京観光財団が、若者のダボス会議と呼ばれるOne Young World Japanと共同で制作したドキュメンタリー動画「SENRI’S SEVEN」での試写会が開催されました。主人公である世界的ドラマー、現在24歳の川口千里氏が、わずか3日間で自ら選んだ日本人女性ミュージシャンと8人でバンドを結成。限られた時間の中で互いが高めあい演奏に繰り出す姿が45分間、縦横無尽なカメラワークとエネルギー溢れる音楽で描かれます。登場人物それぞれの心の繊細さ、音楽への真摯さ、バンドであることの情熱を描き出し、感動的です。

この中で、わが耳を疑ったのが、川口氏がR&Bアワード受賞アーティストのAI氏に出会った興奮の後にはにかみながら述べた「AIさんを知らない人が見ても、アーティストと思わせるオーラがある。わたしが一番見習わなければいけないところ…」という言葉でした。あれだけの迫力のドラムビートを叩き世界を魅了するアーティストのなんという謙虚さ!川口千里というアーティストが存在しなければ生まれなかったSENRI’S SEVEN、そのバンドのつながりは、思いやりにあふれた等身大の女性が示すリーダーシップと協力によって生まれていました。

世界的アーティスト、川口千里氏

川口氏のやわらかいリーダーシップに舌を巻いたわたしは試写会後、川口氏にどうやってそのスキルを身に着けたのか質問しました。答えは、海外ミュージシャンとの演奏で、現場を統率する世界トップミュージシャンの言葉、動き、働きかけを見て学んだ、というものでした。フィリップ・セス氏、アルマンド・サバルレッコ氏とのトリオを組んだ川口氏は、海外のリーダーシップの多様性を肌で感じ、現場で学び取ったのでした。

「SENRI’S SEVEN」試写会で照れ笑い

謙虚さと柔軟性がサステナビリティのカギ

ちなみに、細い腕でドラムをたたくコツを聞くと、「食べる、寝る、歩くと同じように叩く。スタミナ管理し、筋力によってではなく、体が故障しないように、5歳の頃から体で覚えた音を出す」との言葉に、慢心しない継続力と意欲がもたらす力のすさまじさを思い知りました。

冒頭に述べたびじょんネットワークの閉会挨拶で、小池東京都知事は、感染症対策に奔走する首長たちに「本当にごくろうさま」と慰労の声を繰り返し、「コロナで社会が激動する中、ピンチをチャンスに変え、変化に柔軟に対応するにはこれまでの発想にとどまらない価値、ビジョン、ビジネス、技術が必要。希望にあふれた未来を創るパラダイムシフトには、女性の感性、発想力、サステナブルリカバリーつまり持続性ある回復を生む原動力が必要」と述べました。そして、多様なメンバーが互いにインスパイヤされる、刺激しあえる機会の重要性を強調しました。

びじょんネットとSENRI’S SEVEN。立場、年齢、規模の違うグループに共通していたのは、思いやりの実践、多様性をしなやかな強さに昇華させる献身的でやわらかなリーダーシップと協力の心でした。

今や海外に広がるSenri’ Sevenのメンバーたち

共感が人と人をつなぎ大きな力を生む時代。多様性を活力にするコミュニケーションを通じ、企業の価値を高めるダイバーシティPRは持続性の要です。さまざまな女性のリーダーがその成功への道筋を示しています。共同ピーアールはダイバーシティ広報で企業の100年にわたるコミュニケーションを支援しています。

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