持続可能性のための”ライト”なコミュニケーション
 
 

来たるポストコロナ時代、PRのニューノーマルに必要なものとは何でしょうか。前回に続き、IABC Catalystへの寄稿をもとにした日本のグローバルPR事例4回シリーズの完結編では、「ビジネスにおけるPRの将来」を展望します。締め括りにIABCの歴史を振り返り、これからの企業コミュニケーションに求められる『日本語の「2つのライト」』を考えます。

国際協会IABCの歩み、グローバル投稿の経緯

連載最終回で話が前後しますが、改めてそもそもIABCとは何かを説明しましょう。1970年にアメリカ工業編集者協会と国際編集者評議会が合併して発足した国際ビジネスコミュニケーション協会です。 これは正式名称  International Association of Business Communicatorsという団体名の略称です。日本を含む世界100拠点、8000名のPR、コミュニケーション職のメンバーが加盟しています。学生からシニアまで学び続けるコンテンツ総数は1000点に上ります。

わたしがIABCを知ったのは、2017年。自身の高齢出産後で焦っている時期、いくつかのMBAを比較しても納得いくものが見つからずに悶々としているときに、友人に紹介してもらいました。勉強会に顔を出し、まじめで気のいい人たちに触れて、悩みが軽くなりました。それから年に1~2回ほどの勉強会で聞くグローバルトレンドが、自分の共同ピーアールでのグローバルPR支援を補完するようになりました。

それによって徐々に、自分のお客様との日常業務と、世界の潮流とが自然に同期するようになりました。すると仕事が必然的にSDGs、ESGに結びつき、利益と社会問題の補完を実践するようになって、2018年からPR総研に着任。翌年の2019年は、IABC APACイベントにて登壇のチケットを手にしました。

しかしながら折からのコロナ感染症の影響で出張は中止となり、ウェビナーに切り替えて登壇したのが昨年4月。2021年の今年は、オンラインで実施されるIABCグローバルイベントへの登壇を申し込んだのですがあいにく選考漏れ。その通知と同時に提示されたその他の選択肢に「寄稿」があったため手を挙げたところ、採用され今回の掲載につながった、という偶発的な経緯でした。

日本語ならではの2つの「ライト」

冒頭で述べたこれからのPRのヒント「2つのライト」は、実は今回、英文コンテンツを日本語化する過程で生まれました。

まずひとつめのライトは「Right」、正しさです。PRでは常に主張を裏付ける客観的な事実(ファクト)を求められますが、一般的な主張では多くの人が同意する「正しさ」が評価の基準となります。そしてこの、一般的な正しさというのも定義は曖昧。いわゆる「 正しく実行する (Do things right、決められたことをルール通りに行う )」と、「正しいことをする(Do the right thing、目的に向けて戦略を実行する)」とに大きく分かれます。そしてグローバルPRパーソンの場合は、後者の大局的思考が必要です。この点はまた後述します。

もうひとつのライトは「Light」、軽さです。上述のとおり、コロナへの敗北によるニュージーランド出張キャンセルから立ち直ったのは2020年春。オンライン登壇したIABC APACウェビナーでは、現在IABC APAC議長を務めるクリスティ・クリスティ氏がマレーシアから進行役を務め、 わたしは東京の自宅から登壇、 共同ピーアールで国際チームを率いるジャーマン・サーもオフィスから参加して質問やコメントを活性化しました。その結果、身軽な3人で参加者計30名ほどのインタラクティブなディスカッションが実現。さらには同8月、築地健氏が代表を務めるIABC JAPANの協力を得て、新たにコンテンツを拡充した日本セッション登壇も実現しました。

IABCの魅力であり50余年にわたる事業継続の秘訣は、この 軽さ、 身軽さ、柔軟さです。IABCのブランドガイドラインでは、 ブランドパーソナリティとして「オープン」、「プロフェッショナル」、「コンテンポラリー (今どき )」、「 アクセシブル(身近 )」とともに「ライター(より軽く)」を謳っています。これは4月のUNカンファレンス IABC Converge21、でも体現された価値観でした。

正しさ(Right)と軽さ(Light)の両立が、重苦しい雰囲気をやわらげ、コミュニケーションを促進します。海外コンテンツを日本市場向けにでローカライズする上で大切な「正しさ」と、日本から海外に発信する際に役立つ「軽さ」を混ぜ合わせる、日本語ならではの語呂の発想です。

SDGsを左右する戦略の正しさ、軽快さ

「正しさ」の可視化のためにPR総研では、昨年末から所長 池田健三郎氏のもと、 日本の報道関係者136人を対象にSDGsに関するメディアアンケート調査を実施しました。その結果、 84%近くが「持続可能な開発目標(SDGs)は2030年までの目標として有効」と回答する一方で、8割が「2030年までに17の目標のうち半分程度以下しか達成されない」と回答しました。

主任研究員 藤田嘉 子が分析した自由形式の回答からは、「本質的なSDGsの取り組みを」「商品・サービスや製造プロセス等にSDGsを採り入れで」といった声が上がりました。

また、メディアが最も関心あるトピックは 「DX(デジタルトランスフォーメーション)」、「withコロナ/アフターコロナ」、「地方創生」 であることが明らかになりました。つまりこの3点が、ビジネス成長のけん引役になると読み解けるでしょう。

この調査結果から、日本の報道機関および記者が、SDGsという全包囲的かつグローバルな課題に対して、あまりにもテーマが大きいがゆえに懐疑的であることを読み取れます。同時に、コロナ禍を超えるための全国的なDXと、地方創生が日本再興の鍵になると言えるでしょう。

PR総研では PRとSDGs、ESGの掛け合わせを実践しています。SDGsが流行りのバズワードや問題のショーケースでないように、PRは偽善行為ではありません。企業の持続戦略が、PRのコミュニケーション戦略に落とし込まれ、効果的なプロジェクトを通して実業をSDGs、ESGと連動させて、自社と社会双方の課題解決を促進するのです。

最後に

これからのグローバルPRに求められるのは、多様なオーディエンスに対する感性です。ポストパンデミック時代に向け、地球の持続性を基盤とした「 正しいビジネス」の姿勢が生き残りを左右すると同時に、「変化を受け流す軽快さ」が成功を促すでしょう。

その第一歩は、市場の多様性、複雑さを理解することから始まります。変化の早い今だからこそ、様々なデジタルツールを駆使してPR施策をDX化させながら、日常の発言や行動に潜むコミュニケーションの阻害要因、マイクロアグレッションをなくす。人間らしい対話を生むサピエントリーダーシップと、包括的なインクルーシブ・アプローチを実現する。危機管理のためにバックアップ体制を確立する。これらに留意して、市場とメディアの優先順位を明確にし、調査研究や専門家の支援を活用してPR戦略の立案と実施を積み重ねることが、ビジネスを加速させる魅力的なコミュニケーションにつながるのです。

4回連載:
パンデミックを克服するグローバルPRのイノベーション事例
オンライン会見:成功の2要素、グローバルPRの注意点2つ 
PRの危機管理と事業継続のDX事例
ビジネスと社会がともに歩むダブルライトPR戦略 (本稿)
原文: Innovation in Global PR to Overcome the Pandemic
IABC Converge21ビデオ  Five mins with Kazuko – YouTube

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共同ピーアール株式会社

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