PRに求められるジェンダーのアップデート、イクメンは誉め言葉でなく死語
 
 

3月8日は世界がジェンダーを考える「国際女性デー 」、 3月17日は「みんなで考えるSDGsの日」。 折しもテレビ朝日「報道ステーション」の番組PR動画が「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって今、スローガン的に掲げてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」という台詞により、ジェンダー不平等を切り捨てる内容として炎上しています。

“みんな”が誰を指すのかは、実は場面によって異なります。国連が掲げる2030年の持続性達成ゴールに向けた対象は、地球上の全員。まさに多様性と包容(ダイバーシティ&インクルージョン、D&I)を実現する上で妨げになる、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)の第一歩、ジェンダーを考えます。

男だろ、女だろ、の危険性

日本で企業がD&Iに取り組むとき、一番先に上がるのが女性活躍。なぜなら政治はもちろんビジネスにおける意思決定権を持つ女性が圧倒的に少ないため、判断の偏りを見落としやすいからです。過去の成長が遠のく日本で、経済が再生するためにはジェンダーギャップの是正が最優先です。

しかしこれ、言うは易し。どこまでが区別で、どこからが差別か、考えさせられることも少なくありません。表現が適切か否かを決めるのは、発言者ではなく受け手、PRにおいては報道機関でありその読者、視聴者です。発言に相手への深い配慮や感謝があるか、あるいは自己本位かで、同じような表現も受け止められ方が全く異なります。端的に言うと、許されるか、問題になるかの分かれ道です。

ジェンダー問題を疑われかねない表現には、以下のようなものがあります。

「イクメン」 「男前」
「女々しい」「男勝り」
「仕事ができる男(女)」「いい男(女)」
「男だろう、稼いでこい」
「女だろう、料理はどうしているのか」

などなど、知らず知らずのうちに日常に潜む言葉です。
話し手と聞き手の中に潜む無意識のジェンダーバイアスがあぶり出されます。

違う意見を聞く、異なる視点から見る機会を作る

コロナ禍で仕事や働き方が変わり、世界中で女性にかかるストレスが大きくなっています。具体的に見られるのは、在宅勤務する女性の家事や育児までもの負担増、有期雇用の女性の足切りなど。これは、ビジネスは男性、子どもの世話や家事は女性というすり込みが生んでいる事象です。 男性の育児を特別視する「イクメン」という言葉が、役割を終えた死語と言われるのは、男尊女卑の世襲が社会のひずみを生む根源となるからです。

今年2月に 東京五輪・パラリンピック組織委員会で森喜朗会長(当時)が発した「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などの発言は、女性蔑視と世界中から批判が相次ぎ、辞任に追い込まれました。この時に世論を動かしたのは、#わきまえない女 などのハッシュタグで戦う人たちでした。同様に、弱者への暴力、差別を止めようとする動きは、#BlackLivesMatter #StopAsianHateなどのタグで手と手を取り合いムーブメントを起こしています。

世の中には常に課題があり、変革者が現れます。ジェンダーバイアスを取り除くのは、例えば稼ぎ手を担う女性を支える、 主体的に家事や育児を主動する男性でしょう。また、男女別姓が認められない日本で、主体的に妻の姓を選ぶ男性でしょう。一人ひとりの極めて個人的な選択が、因習の刷新、新しい価値観と社会の創出につながります。

自分の中のアンコンシャスバイアスに気づく上で有効なのが、意図的な学びです。下記はその一例です。

  • 新しい人やグループと話をする、意見をもらう
  • 新しいツール、コンテンツ、場所、立場を試してみる
  • これまでの習慣を見直してみる、新しいことに挑戦する

ちょっとしたことですが、自分が悪いと思っていたことが人からは良いと見え、その逆も然りということに気づきます。また、良くも悪くも傍観していた時には気づかなかった、違和感や不公平感、心のざらつきにも気づきます。それが人を思うことにつながります。

日常のリフレーム。それが自分自身の進化を止めない、成長のためのPRツールになるでしょう。

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