波乱万丈、インポスター告白
 
 

誰もがコロナの次、新しい形を模索している毎日。就職、転職などの節目でも、オンラインだからこそ生まれる出会いがあります。PRの世界を海外に広げてくれる英語の達人に 、キャリアと人生のヒントがありました。

英語超人の悩み

これから新たな挑戦をしようとしている人に勇気をくれるのが、数多くの人気ビジネス書を手がける売れっ子翻訳家の関美和氏です。 人がうらやむような学歴、職歴、生活を重ねるエリートから、波乱万丈な転機を迎え、家族は思わぬ方向へ。45歳にして泣きくれる日々、経済的不安に直面します。それを救った翻訳への情熱が、その後の資本になっています。

関氏の超人的なキャリア以外に驚くことがひとつ。それは、ピカピカの経歴を持ってもなお、ファンドマネージャー、投資顧問会社の経営者としての自らの能力、意欲を認められず「プロのフリをしていても、自分はニセモノのような気がしていた」という自己認識です。「あんな優秀な人が自分の功績を認められないインポスター・シンドロームだなんて!」と絶句しました。

そして翻訳家への転身後、「金融にいた時と違って、翻訳をしている自分は、ニセモノのような気がしなかった」と振り返る関氏。それは天職を意味しているのでしょう。

どんなにがんばっても自分がダメな気がする。それはまじめな人にありがちな悩み。いくらメディアで取り上げられ輝いているように見える人でも、同じなのです。そして関氏はさらに、自分の適性を見つけることの貴重さ、大切さを示しています。

五里霧中へのアドバイス

わたし自身、7年前の育休復帰後は、プレッシャーに過敏になり抑うつで一時休業せざるをえませんでした。そこから日常生活を普通に戻し、キャリアをフル稼働モードに戻すまで、数年かかりました。

そこからは、はい上がろう、遅れを取り戻そう、と思う一心。この頃、わたしの学歴コンプレックスを刺激する広告に出会い、しばし回り道。PRを極める上で、実学に近い修士号を見つけ、本気で投資するか悩みました。もはや何が先に見えるのか分からなくなっていました。

その修士号修得に必要なのは2年間、数百万円。はたして、と信頼できる仲間、世界一流ピカピカの学歴、職歴、そして人柄のPR業界の同志に意見を求めたところ、まったくの予想外、衝撃の返事がきました。

「うーん、私が上瀧さんの立場だったら、行かないかなあ。たぶん、上瀧さんはここで教える立場くらいの人だと思うのですよ。僕が買いかぶりすぎかもしれないけど。」

「上瀧さんくらいのキャリアなら、一つでも実務でクライアントに自慢できるビッグプロジェクトを手がけたり、講演会での登壇の機会などを増やしたりして、名を売っていく方がいいと思いますよ。」

わたしはただ言葉を失って、赤面しました。

インポスターをみとめる

今読み返しても恥ずかしくて、これをさらすのは顔がほてります。もったいなくも親切、厳しくも優しい友人の指摘に、頭をぶん殴られた思いでした。

ありがたいと同時に、自分で自画像を矮小化し、知らず知らずに自己否定して、迷走しかけていたことに気づかされました。わたし自身が自分をペテン師と追い込むインポスター・シンドロームでした。

これをきっかけに、わたしは業務以外の時間を、社会的なプロジェクトや寄稿、講演、登壇に使うようになりました。名を売るため、ではなく、人に貢献しながら学ぶために、です。

お客様の影や、会社名、肩書の後ろに隠れるのではなく、上述の友人のようにPRパーソンとして社会的責任をもって発信するために、です。そして気づけば、名前を覚えてもらえるようになってきました。

学歴、職歴コンプレックスからの一歩

40代も終盤の今、気が合うママ友は、職業も背景もまちまち。ただ、自分にも仕事、社会にも真摯である点が共通項のように思います。

ある日、ママと息子たちで飲みながら他愛ない話をする中で、ふと、「ねぇねぇ、自分が人よりも頭が悪いって不安になることある?」と聞いてみました。すると、博士号取得、短大卒業、専門学校卒業と学歴もまちまちな友人は異口同音に「ないね~」と即答。

これは驚きでした。なぜならわたしは、自分が「平均的」と思う自分の学歴や職歴が「劣っている」と思い、それが「事実」と考えていたからです。

しかし、頭の良し悪し、優秀さ、ましてや人の好き嫌きは、決して学校や会社のランキングが決めるものではない。どんな人も、「納得いく自己評価は自分でしかできない」。目から鱗が落ちる思いでした。

そこでようやく、コンプレックスは自分の思い込みだと気づきました。自分の中で顔を出すペテン師を受け入れられるようになりました。はじめて、隠し持っていた学歴コンプレックスが消えました。そして気づくと経歴コンプレックスも消えていました。

多様性がノーマルを変える

これから新しい仕事、職場、挑戦に挑む方へ。自分を疑うインポスターはやさしくいなして、自分を信じれば、天職は見つかります。北米とイギリスをつないで開催されたComms Imposter Syndrome Webinarでは、世界のコミュニケーションのプロの8割が、「わたしはだめだ」と不安を覚えると認めています。そして冷静かつ軽やかに、自分を疑わない残りの2割は、「ただの自信過剰」と笑い、互いを励まします。その明るさが、様々な立場、価値観をプラスにつなげる多様性を糧に、社会やビジネスをリードするPRのカギなのです。

好きこそものの上手なれ。自分を信じて、世の中を明るくするPRの新しいノーマルを作っていきましょう。

■ 日経xwomanアンバサダーブログ「インポスターをいつくしめ」 を再構成しました。

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