取材対応のPRノウハウ(下)

取材対応のPRノウハウ(下)
 
 

広報担当者としてマスコミなどの取材を受ける時、しっかりと準備をすると安心して現場に立ち会えます。に続き今回は、取材を設定してフォローするまでの流れを取り上げます。

メッセージ発信を助ける準備物

取材は、報道のチャンスです。自社ブランドを代表する話し手が、社会に対してメッセージ発信する機会が生まれます。そのため広報担当者は、取材者と話し手が気持ちよく話ができる環境を整えます。

ただし、取材のための訓練(メディアトレーニング)を受けていても生身の人間がやりとりする以上、誤解が生じる可能性があります。また、取材者の質問に漫然と返答するだけでは、うまく言いたいことを伝えられません。

そこで広報担当者は、自社データをまとめた話し手用の資料(ブリーフィングシート)と、記者向けの資料(プレゼンテーションなど)を準備します。外資系企業、資料が日本語以外の場合は、翻訳の時間とコストがかかります。最終的な資料を何語にするかを、最初から考えて段取りましょう。

媒体および記者については事前によく調べ、取材時間の無駄や心象を損ねることがないようにしましょう。時間が許せば、広報担当者が取材者と事前の打合せ(ブリーフィング)をするのがベストです。その際、取材者の興味範囲、質問内容、取材の進め方をすり合わせます。

取材者に事前に想定質問をもらっていても、初対面だと最初に口を開くのをためらってしまう場合があるので、話し手から簡単に自己・自社紹介などのプレゼンテーションをするのが自然でおすすめです。プレゼンテーションが無いと、挨拶で終わってしまい、報道につながらないこともあります。取材のゴールを、記事につなげることに置くのであれば、プレゼンテーションは準備しましょう。

さらに余談として、取材者と話し手が互いに親近感を持つような小話などがあると盛り上がります。出身地、出身校、趣味、家族などです。

取材の環境も大切です。取材者が落ち着いて聞きメモを取れるように、机のスペースと光、スライドを見せる場合はスクリーンやタブレットなども用意します。そして話し手と会社ロゴを写真に撮ってもらえるよう、撮影場所を準備しておきましょう。写真の出来栄えは光に左右されるので、明るい場所を確保しましょう。

日本語以外の場合も

話し手が日本語を話さない場合、取材者の要望に応じて通訳の手配も必要です。取材の要となるコミュニケーションの齟齬が生じないよう、プロの通訳さんに依頼することをおすすめします。

通訳さんにも事前に、ブリーフィングシートやプレゼンテーション等を共有し、取材の背景、自社や業界の用語などを頭に入れて準備してもらいます。この事前準備がなければ、どんなに優秀な通訳さんでも良い仕事ができないので、手間を惜しまないことが大切です。

取材者、話し手、通訳さんともに喉が乾燥しないよう、水等も必要です。長いフライトを経て来日した経営幹部の場合、「コーヒーがない」とイライラされるたり、「ダイエットコーラがない」と怒られたりするので、話し手の嗜好も確認しておきましょう。

もし、話し手のリクエストに応えられない場合は、事前にお知らせして期待値のズレがないようにしましょう。話し手が不意に不機嫌になって、取材で上手く話せなくなるような事態を避けましょう。日本になれていない話し手の場合は、ことさら気配りすると上手くいきます。

準備物内容
話し手用資料
メディアと記者の情報、関連記事、自社データ、過去のプレスリリースなどをまとめたブリーフィングシート(必要に応じ翻訳)
取材者用資料会社概要、話し手の略歴(バイオグラフィ(バイオ))、プレゼンテーションスライド(デック)など(必要に応じ翻訳)
取材会場十分な光、テーブル、いす、ロゴ、水など(必要に応じ通訳)

本人らしさを大切に

話し手には当日の服装を打ち合わせておくとよいでしょう。コーポレートカラーを取り入れたコーディネートはおすすめです。いずれにせよ、本人らしさを大切にしましょう。報道には取材者が受けた印象、話し手の人柄が出るからです。

話し手にはブリーフィングシートを事前に送るだけでなく、当日、事前に口頭でも説明(ブリーフィング)して取材者および回答内容を思い出してもらうように (リマインド)します。話し手と通訳さんとの間の取材内容確認(ブリーフィング)も当日行い、互いのアクセントに慣れて、通訳のペースを確認します。このため、話し手の時間は取材の1時間前から、通訳さんも30分前から押さえるとよいでしょう。なお、取材者は朝が苦手な方が多いので、取材設定の時間は日中がベストです。

広報担当者は取材に同席し、録音、記録します。取材者と話し手の表情を見ながら、話がはずむよう、必要に応じて会話を促します。適宜、要点を補足すると、短時間で取材内容がまとまりやすくなります。

取材後は広報担当者として、取材者に御礼のメールを出すなど、感謝を示すことを忘れないようにしましょう。取材後に追加の質問や資料提供、情報の補足など、報道に必要なことがないか取材者に聞くことで、報道の支援(フォローアップ)ができます。

上手くいく心構え3つ

取材が上手くいく心構えは

  • 記事・報道は話し手の取材者の価値判断、編集者の産物。広報が無理にコントロールしようと思わない。
  • 話した内容が必ずしも報道されるわけではないことも念頭に置いて、取材をコミュニケーションの場にする 。
  • 取材者の心象は報道を左右する。 取材者は読者・視聴者・社会のために報道する、必ずしも話し手のためではない。

の3点です。

広報の立ち位置を間違えないよう、取材者と自社、話し手のベストな関係構築に力を尽くしましょう。

取材後は、前回お伝えしたとおり事実確認(ファクトチェック)を可能な範囲でして、報道をクリッピングします。社内外に適宜、その報道を周知して、コミュニケーションの活性化につなげましょう。自社報道の蓄積から、次の広報活動への指針が生まれます。

取材はブランド構築のチャンスです。ひとつひとつの取材から、メディア、自社、社会などについて多くのことが学べます。ぜひ前向きに楽しんで取材対応しましょう。

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