ビッグデータはくそくらえ
 
 

10月9日に開催された、ワールドマーケティングサミット東京2019。 筆者は次世代マーケティングプラットフォーム研究会運営メンバー、プレスとして前回に次ぎ3回目の参加です。マーケティングの父として知られるノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院教授のフィリップ・コトラー氏の基調講演に続き、富士フィルムホールディングス、ネスレ日本の経営者たちが登壇。強烈なリーダー論とイノベーション論で、企業マネジメント層の聴講者たちに刺激を与えました。

“頭”が良いだけではだめだ

「富士フイルムの経営改革」と題して登壇したのは、富士フイルムホールディングス代表取締役会長兼CEO、古森 重隆氏。約20年にわたり富士フイルムのトップを務め、経営危機からの脱却、ビジネスモデルの変換を実現した前回の講演内容に加え、経験に基づくリーダー論には、強い個性が反映されていました。

古森氏いわく、有事のリーダーに必要なのは、経営者としての強い意思、スピード、思い切ってやるダイナミズム、何をやるかのプライオリティ。そしてもっとも大切なのは、「成功させること」と言い切りました。

そして、仕事の成果は人間力の総和であり「“頭”が良いだけではだめだ」と断言。本質、全体像をつかむ“目、耳、鼻、皮膚、第六感”、相手を思いやる“ハート”、度胸やガッツを持つ“腹”、現場で行動する“足”、首根っこを捕まえてでも引っぱっていく腕力とスキルを持つ“腕と手”、表現する“口”、責任感を示す“顔と姿勢”。これらが備わってこそ「強く、賢く、正しく勝てる」と主張しました。

良い経営者は左脳で考え、右脳でひらめき、勘がいい。「少ない情報から賢い判断をするものだ」「ビッグデータはくそくらえ、スモールデータで判断を」と述べました。

市場調査は役立たない

続いて、約10年にわたり初の日本人トップとして、ネスレ日本代表取締役社長兼CEOを務める高岡浩三氏が登壇。外資系企業が成功しない、縮小し続ける日本市場におけるイノベーション実践論を、ネスレのキットカット、ネスカフェなどを例に挙げながら語りました。

高岡氏は、前回も触れた日本の高齢化、単身世帯の増加といったデモグラフィック(人口統計学的属性)の変化に加え、何十年、百年スパンで見た技術や環境の変化を読み取る視点を解説。「“新しい現実”から“新しい問題”、すなわち顧客が気づいていない問題、諦めている問題を見つけることが必要」と述べ、ニューリアリティ・プロブレムソルビング(NRPS)の重要性を説明。

クレイトン・クリステンセンのイノベーションのジレンマを引用し、NRPSにより日本が得意な単なる「改善」「リノベーション」つまりサステナブル・イノベーション(“持続的”革新)を越え、成長し続ける新しい「市場の創出」つまりディスラプティブ・イノベーション(“破壊的”革新)を実現できる、と述べました。

そして、“破壊的”革新に必要なのは、お客様自身が分かっていないニーズである、「日本が必要なイノベーションを作るには、市場調査は役に立たない」と説明。AIによる産業革命を迎えた今、「新しい問題」を直視し、あと100年、サステナブル(持続可能)で、プロフィタブル(利益ある)成長を、と呼びかけました。

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