イノベーションとキャンペーンの投資効果

イノベーションとキャンペーンの投資効果
 
 

10月9日に開催されたワールドマーケティングサミット東京2019、午後の部はカリフォルニア大学ロサンゼルス校ビジネススクール教授、ドミニク・ハンセンズ氏の講演「イノベーションの報酬~The Rewards to Innovation~」から始まりました。

ファイナンスの疑問はとけるか?

「午後一、皆さんの眠たい時間なので手短にお話しましょう」と軽快に話し始めたハンセンズ氏のメインテーマは、“投資家からみたイノベーションの価値”。技術が可能にする製品のイノベーションは、消費者からは歓迎される一方で、金融リスク面で経営者および投資家に疑問視されがちです。果たして実際にイノベーションの価値はどう評価されるのでしょうか。

ハンセンズ氏はまず、1899年代の米特許庁、1943年代のIBM、2006年のYouTubeに関する発言を引き合いに、「どの時代、どの市場でも、イノベーションの余地は常に過小評価されている」と分析。

1943年、IBM初代社長のトーマス・ワトソンは「世界のコンピューター市場は5台」と推算

ACCORD理論と新規性Uカーブ

その上で、イノベーションが実現するには、技術的に優れた製品を作るだけでは不十分と解説。素早く受け入れられるためのACCORD理論を紹介しました。

ACCORD理論の5大要素とは、新しい製品が従来のものと比べて明らかに良いこと(relative Advantage:比較優位性)、これまで同様に使いやすいこと(no Complexity:簡便性)、これまでと同じように使えること(Compatibility:互換性)、良さが目に見えること(Observable:可視性)、リスクがより低いこと(less Risky:リスク回避)、リスクを分散できること(Diversifiable:リスク分散)で構成されています。

その例として、かつてのフィルム式カメラと今のデジタルカメラを比べ、「今ではより品質の高い写真が、これまでと同じように撮れ、しかも現像する必要がないだけでなく、撮ったその場で確認できる。昔はせっかくの家族写真を撮っても、数日後にしか現像できず、ブレたり切れたりしていたら撮り直すことすらできない、というリスクがあった」と解説。また、電気自動車を例にあげ、「バッテリーの故障や劣化といった可能性があるクルマを、購入するのでなくリースすることで、所有リスクを低減、分散できる」と利用形態の革新にも当てはめました。

さらには、製品イノベーションに必要な新規性(Newness)にふれ、新製品500点を分析した結果、初年度中に消費者に受け入れられるのは、新規性が低いか高いかいずれかに偏りがあるものであり、中庸なものは成功しない、と説明しました。

イノベーションとキャンペーンの関係

ハンセンズ氏は続けて、投資家はイノベーションをどう評価するのかを解説。自動車400種およびコンシューマー製品2万3000製品を対象にした調査結果を紹介し、「投資家はイノベーションを長期的に評価する」「イノベーションが1年以上にわたり株価にもたらす影響はプラス」と述べました。

そして、業績に与える影響を比較するために、キャッシュバックやキャンペーンといった金銭策がもたらす効果を数値化。それによると、金銭策を打つと売上には貢献するものの、長期的には株価にマイナスに働く。一方でイノベーションは、長期的にも短期的にも売上、利益、株価いずれにもプラスに働くと説明しました。

事例として、ホンダが1999年に投入した新型SUV、Odysseyを紹介。可動式の座席により収納スペースを調整可能にしたイノベーションにより、株価はわずか4~5週間で上昇。これは、製品ライフサイクルが4~5年であることを考えると極めて早い。加えてOddyssey1台当たりの粗利益は、新モデル投入前後で1万300ドルから3万5000ドルに改善したという、著しい経済効果を紹介しました。

ハンセンズ氏は最後に、

・イノベーションのリスクはパターン化により管理可能

・イノベーションの実現には優れた技術、製品だけでなく消費者に受け入れられることが必要

・投資家は消費者よりも素早くイノベーションを評価する

と結論づけました。

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<午前プログラムレビュー>

基調講演(ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院教授、フィリップ・コトラー氏)

講演(富士フイルムホールディングス代表取締役会長兼CEO 古森 重隆氏、ネスレ日本代表取締役社長兼CEO 高岡 浩三氏)

パネルディスカッション(フィリップ・コトラー氏、高岡 浩三氏、モデレーター:IMD北東アジア代表 高津 尚志氏)

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