目覚めよブランドアクティビズム
 
 

日本マーケティング協会が10月9日、ベルサール汐留にて、ワールドマーケティングサミット東京2019を開催しました。「マーケティングで世界をよりよく」を標榜するこの国際会議は2010年、現代マーケティングの父として知られるフィリップ・コトラー氏の呼びかけにより設立されて以来、世界各地で運営されています。

日本開催は2014年から連続6回目。筆者が次世代マーケティングプラットフォーム研究会運営メンバー、プレスとして参加するのは前回に次ぎ3回目 です。今回は「イノベーションによる価値創造(Value Creation Through Innovation)」をテーマに、コトラー氏をはじめとする世界有数の経営者、研究者たちが登壇。800名定員のホールが聴講者でいっぱいになりました。

日本から世界への潮流

冒頭は、日本マーケティング協会 会長の藤重貞慶氏(ライオン 相談役)が開会あいさつ。今年のワールドマーケティングサミット参加者は8500人に上り、「マーケティングによって社会、経済の発展を促す潮流が、日本から世界に広がっている」と述べました。

スカンジナビアモデルへ

基調講演はフィリップ・コトラー氏が登壇。まず、理想の社会とは、「飢餓、貧困、衛生、安全、住居、教育、医療、選択などの不自由がない社会」と述べました。

それからアメリカを例に現状分析し、節税効果を上げている超富裕層が多い一方で、貧困層が13~15%に上る「資本主義」のほころびを指摘。 筆者が調べたところ日本は、相対的貧困率が16.0%(2009年、厚生労働省 国民生活基礎調査)と国内でも深刻です。

コトラー氏はさらに、銃の撤廃を求める声が無視され白人至上主義がはびこる「民主主義」の機能不全を指摘しました。

GDP(国内総生産)が示す経済には、軍事費、不健康な食品および飲料、賭博など、“よくない”おカネが含まれている。そこで、古い資本主義、民主主義から、新しい民主社会主義(スカンジナビアモデル)、社会民主主義的福祉レジーム(ノルディックモデル)への移行が必要と提唱。ユニリーバのCEO(最高経営責任者)をつとめたポール・ポールマンを引用し、「地球に害を与えない、命を輝かせる経済成長を」と訴えました。

トリプル・ボトムライン

そしてそのための3つの要(トリプル・ボトムライン)として、

・プロフィット(利益、経済)の改善

・ピープル(ブータンが象徴する幸せ)の改善

・プラネット(地球の持続)の改善

の3Pを示しました。

ステークホルダー、未来の消費者を重視

さらには、奴隷撤廃や女性、消費者が権利を得てきた歴史を振り返り、従業員や取引先への支払いを低く抑える“これまでの株主至上主義”を否定。「仕事を作り出すのは消費者だ」「企業は社会が良くなる支援をすべき」「シェアホルダー(株主)中心からステークホルダー(あらゆる関係者)中心へ」と唱え、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を促しました。

続いて、企業の信用を数値化する調査機関、米Reputation Instituteに言及し、「企業は慈善事業(チャリティ)だけではダメ、もっと大きな視野を」と提言。「2000年代に成人した若いミレニアル世代、未来の消費者が求めるのは、企業としての思い、こだわり、個性だ」と熱弁。「企業としての立場を明らかに示せ」と述べ、社会活動(ソーシャルアクティビズム)、ブランドの態度表明(ブランドアクティビズム)の重要性を訴えました。

価値を考えるCMOコミュニティ

また、マーケティング界隈でチーフ“レベニュー”オフィサー(最高“利益”責任者)、チーフ“グロース”オフィサー(最高“成長”責任者)、チーフ“カスタマー”オフィサー(最高“顧客”責任者)、チーフ“コマーシャル”オフィサー(最高“商業”責任者)といった新しい肩書が続々と生まれているトレンドに触れ、「チーフマーケティングオフィサー、CMO(最高マーケティング責任者)として、すでに育っている巨大なコミュニティとつながっていることが大切」という見解を示しました。

さらには例え話として「製薬会社の営業が病院を訪問すると、医師は受付に“営業は不要、サンプルをもらっておいて”と言って、面会を拒否される」と述べ、「営業は製品を売る、一方で良い製品を作るのはマーケティングだ」「マーケティングを営業が統括してはいけない」と主張。

また「技術は“何が可能(possible)か”を考えて技術開発するが、マーケティングがないと人にとって価値あるものができない」「マーケティングは“何に価値があるか(valuable)”を考える仕事だ」と定義しました。

社会とマーケティングの未来

さらには社会とマーケティングの未来を解説。アルゴリズム、AI(人工知能)、予測分析、データサイエンス、マーケティングオートメーション、コンテンツマーケティング、オムニチャネルなどを通し、ペルソナ(ユーザー像)の属性や心により沿ったアプローチが可能になるという方向性を示しました。ニューラルネットワーク(神経網)、バーチャルリアリティ(仮想現実)などを通じた、経験駆動型ともいえるマーケティングの発展を予測しました。

そして最後に、「今と同じビジネスを続けていたら、5年後の将来はない」と強く警鐘を鳴らしました。

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