インクルージョンの日本語さがし
 
 

今月4月23日、IABCというビジネスコミュニケーションに特化した国際協会(International Association of Business Communicators)が主催するウェビナー概要英文)で、「多様性とインクルージョンがもたらすイノベーション」についてお話する予定です。(要申込 ※ 4/23(木)日本時間の正午~: 聴講無料、どなたでもご参加いただけます 。 録画: YouTube スライド:SlideShare

社会における多様性とは何か問いながら、3カ月かけて20人以上を数える取材、支援の声を拾い、もくもくと発表資料を作成中です。

しっくりくる言葉がない

「多様性 ( ダイバーシティ )とインクルージョン」とは、 いろいろな人が、所属意識と仲間意識を持っていられる社会や企業のあるべき姿を示すひとかたまりの概念。利益を上げながら社会に貢献する企業では、多様なメンバーが安心安全に働ける環境から変革や成長が生まれるため、まず人事戦略の文脈でよく使われます。

男性中心の日本企業や社会の場合、「ダイバーシティ」という言葉はよく”女性を巻きこむ”ときに使われます。しかしこの「インクルージョン」という言葉は日本語でしっくりくる言葉がないんです。 「包摂性」 「包含」「一体性」という訳語も、頭でわかってもピンときません。

一方で「日本でインクルージョンの議論って進んでないですよね?」と質問すると「 日本は基本的に何でも受け入れるから、無意識だからじゃないですか」といった声も聞かれます。これだけでひとしきり議論になります。

似ているようでひとりひとり違う

イノベーションを忘れてた

ちょうどこの時期、新しい技術を持つグローバル企業からのPR提案依頼が重なりました。提案者として責任をもって話せるよう、自分自身が歩んできたIT畑の歴史をひも解くうちに「あっ」と驚きました。すっかり忘れていたのですが、自分自身のキャリア早期の原風景を彩っていたのが、まさにダイバーシティとイノベーションだったからです。

1990年代のインターネットサービスプロバイダー、2000年のインターネットデータセンター、いずれも世界最高、日本初をうたいイノベーターと呼ばれる技術会社で仕事を覚えました。いろいろな人種、国籍、背景の人が一緒になって成長し、失敗し、再起を図りました。多様性と変革を形にする職場で社会人として育ち、それがあったからこそPR業界の中でずっとワクワクして技術を追いかけ、さまざまなクライアント、人々と働いています。

なぜダイバーシティが気になるのか。その原点は、自分がたまたま女性で、母の世代から続く政治、経済、社会の場における低い地位、賃金を、次世代のために是正したい、という思いです。もちろん自分個人の話ではなく、総体的な話。女性を語ることは男性、その他を語ることとつながります。

そして自分が男児を授かってからは、「こんな現状を未来のあたり前にしたくない」「負の遺産を引き継ぐのはやめよう」という思いが強くなりました。男だの女だの紋切り型の属性ではなく、ひとりひとりの個性、違い、特徴が、あらゆる場面で尊重されるべきだと思うのです。

当時を思い出しながらFacebookのおかげで20年ぶりにつながった創業副社長からは、「多様性とインクルージョンがもたらすイノベーション 、というタイトルだけで、 まさに創業者が日本のインターネット普及に挑んだこととつながる」という言葉をいただきました。蛙の子は蛙三つ子魂百まで、とはまさにこのこと。すっかり忘れてたなんてバチがあたります。

三つ子の魂に感謝

見えない傷をいやす

そしてこのご時世、新型コロナウイルス対策のため外出が制限され、人と会えない。わずか数カ月で一斉休校・休業、全員在宅勤務へと、一気に押し寄せる変化からくるストレスも多く、衝突もありました。

世の中は、安心安全を確保するために、今おのずと働き方改革が進んでいます。わたしも、このいつ終わるかわからない戦いをきっかけに、しがらみを吹っ切って環境を変えました。 新しい環境は、新しい歩みのために必要なのです。それは、社会だけでなく自分自身を変えることにもつながります。

しかしここにたどり着くまで、つらいこともありました。とり残される思いをする場面でトラウマがフラッシュバックして、焦ったこともありました。

そんなガラスのハート(笑)が潜んでいる時だからこそ、過敏かもしれませんが「家にいよう」というメッセージを聞くたびに、それだけでいいんだろうか、と自問自答します。海外居住者、路上やシェルターにいる人、難民の方などのことが脳裏をよぎります。家にいられない人たちの、身体的な苦労はもちろん、言葉や態度による見えない心の傷が気になって仕方がありません。

日本はなんでも受け入れているからインクルージョンが意識されないのではなく、声なき声を拾わないから、インクルージョン議論が起きないのではないでしょうか。

みんな見た目も個性も違う

とり残さないで

今回のウェビナーのためにほうぼうで「あなたにとってダイバーシティ&インクルージョンとは何ですか」と問いかけるたびに、ジェンダー、居住地、国籍、家族構成、知識、障害などさまざまな違いに目を開かせられました。そして、今まで気づいていなかった違いを知ると同時に、そのカミングアウトが社会にもたらすインパクト、前進をつぶさに見ました。

ひとりひとりの違い、その一つ一つが受け入れられる社会でなければ、新しいものは生まれない、と証言します。イノベーションは、多様性を受け入れる環境がなければ実現できないのです。だからこそ、ひとりひとりが疎外感を感じない社会が必要。それがインクルーシブな社会、共生社会であり、ともに未来を作る共創社会になるのだと思います。

ぜひこの未曾有の事態を、誰もとり残さない社会づくりにつなげたい。そのためには、ひとりひとりが人との違いを隠さず声を上げて、その価値を活かすことこそが、新しい時代を拓く一助となります。

新型コロナウイルス感染拡大の終焉は世界の持続につながります。そう、インクルージョンは誰もとり残さないことなのです。全員で違いを声に出し、地球のサステナビリティのために一石を投じていきましょうよ。

ひとりひとり声は違う

IABC Japanご案内【IABCのウェビナーが開催されます】
IABC APACご案内 Diversity & inclusion can drive innovation
お申込ページ Webinar Registration 聴講無料、どなたでもご参加いただけます。
ウェビナー開催日時 4月23日(木)正午~

【公開】
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