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肝を冷やしたPRリスク管理事例

コロナ下の今、どの業態でもDXが加速しPR現場も変化しています。 前回に続き IABC Catalystへの寄稿をもとに日本の最新事例を取り上げる4回シリーズです。第三回は「オンライン会見におけるリスク管理と事業継続」に焦点を当てましょう。

PR部隊のバックアップ、求められる事業継続性

常に発表や取材という時間との戦いの渦中にいるPRにとって、要も重要なデータ資産のバックアップ運用が重要です。とはいえここで注力すべきは、決してどのバックアップツールをどの手順で入れるかではなく、「時間や予算の制約の中で使えるものは何」であり「誰が何をできるか」です。人は追いつめられるとパニックに陥ることを肝に銘じて、その場の条件に即して臨機応変に対応していくことが求められます。

リモート環境にあるコロナ下で、PR運用がDX化している例として、グローバル企業が海外本社と連動したオンライン会見が挙げられます。発表内容の本社すり合わせと 社内承認、日本語化、スピーカー登壇と記者誘致などのスケジュール管理を経て、オンライン本番に臨みます。50分目安の会見中には「イベントが中断してはいけない」という緊張を強いられます。PRの事業継続が焦点です。

ここでふたつ、肝を冷やしたリスク管理例をお伝えしましょう。ひとつ目は「ネットワークの断絶」です。ある企業の日本市場進出のプレス発表につき、東京、シンガポール、サンフランシスコを結ぶハイブリッド 会見 (会場とオンラインいずれでも参加可能)が始まる直前、会場のシェアードオフィスにて、ネットワークのアクセス権がないことが発覚したのです。事前の現場確認でネットワークが利用できることを確認していたにも関わらずサービスは有効でなく、PCの向こうに控える海外チームにも、日本の登壇者にも、講じる術がありません。しかも、 共同ピーアールの備品として私たちが持参していた バックアップWi-Fiルーターのどれも、このビル内ではネットワークがつながらないのです。

しかし開始時間は決まっているため、まずはその他の準備を進め、通訳付きのプレゼンテーションのリハーサルに2人、会場現地での記者受付および誘導に 2 人が付きました。その間に、残りの1人がLANケーブルを入手して5分前に滑り込み、 固定ネットワークにつないで予定通りにログインしてイベントを開始。あとはスムーズな運用を無事終え、インパクトある会見から記事獲得まですべて成功裏に終えました。 5人が柔軟に役割分担できるチームワークがあったからこその成功でした。

ふたつ目は、「PC、Wi-Fi、音声の三重苦」です。こちらは別のグローバル企業、日本法人で初のプレス発表として、日本のスピーカーのみなので通訳なし、登壇者2名が同じ東京拠点からのオンライン会見配信と、比較的シンプルな構成でした。しかし最初の課題は、コロナ感染の状況が刻々と変わるため ギリギリまで会場現場を絞り込めず、使用する機材の特定ができなかったことでした。会見当日になって、初めて登壇者とPRチームが対面し、会場設定、音響とビデオプラットフォームのリハーサルは予定通り完了。ここで配信PC2台中の1台に不備が見つかり、共同ピーアールのバックアップPCに切り替えてなんとかスムーズに本番開始。

すると今度は、PC操作ミスによる音声のハウリング、Wi-Fiネットワーク断絶によるスクリーン停止、音声配信停止、登壇の仕切り直しと、最初の10分間にトラブルが連発。過去1年で最も難しい運用課題に直面しました。しかしながらも、PRチーム4人が、会見の邪魔にならないようジェスチャーや筆談、アイコンタクトで動き回り、会見を軌道に戻してスピーカーの話を盛り上げ、きっちり時間内に充実したメッセージ発信ができました。参加者には終了後、トラブルのないリハーサル時の動画ならびに登壇者写真を提供し、好意的な記事の獲得につながりました。登壇者2名と運営者4人が一丸となってできた成果でした。

まとめると、オンライン会見のリスク管理のためには、

・想定しうるプラットフォーム、ネットワーク、バッテリー、電源、データ保護などのリスクを洗い出す
・役割分担を想定する、シナリオ変更時に対応できるチームワークを築く
・障害発生時に持てる物でバックアップし、登壇者や参加者の不安を煽らないようチーム全体で平常心を保つ

の3つに気をつけると良いでしょう

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