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AIxPRで考える「いい転職ってなんだろう?」

「転職しました」と聞くと、ワクワクする新天地でキラキラ輝く相手の姿が目に浮かぶようで、思わず「おめでとう!」と声をかけます。それが大企業だと「すごいねー!」と拍手が加わります。そして同僚、仲間だと「さびしくなるね」という本音も混じります。

あー、わたしも転職したのはつい先日、次の5社目はいつどこにしよう、と思っていたらもう11年目(笑)。とはいえ、まだまだ飽きることなくパワー全開です。ところで、いい転職って何でしょうね?

もっと楽しめる職場を!

わたしが事業会社からPR会社に転職したのは、広報として海外での社長の不幸、アメリカからイギリスにわたる国際買収、本社倒産、日本撤退などなど、なかなかヘビーな報道対応を「やり切った」と思ったからでした。30歳過ぎたし、もう大企業の中で自分のポジションを守るのに悪戦苦闘して燃え尽きるのではなく、自分のスキルを使ってもっと楽しめるところに行きたい!と思ったのでした。

2008年頃、共同ピーアール創業者、故 大橋榮氏(右)と筆者(中央)の家族(左)も共に社員旅行

Appierからのリマインド

それを思い出させてくれたのが、AI(人工知能)関連の仕事。クライアントのAI企業、Appier(エイピア)が、日本のビジネス変革をテーマに公開イベントを開催したときのことでした。

イベントを仕切るホストは、AppierのチーフAIサイエンティスト、ミン・スン氏。AIテクノロジーであるコンピュータビジョン、自然言語処理、深層学習分野の研究を15年以上に渡って続け「研究者には肩書きよりもデータが必要」という信念でAppierに参画した人物です。

200人を超える、経営者が聴講に集まったこの日、スン氏の人脈を駆使して集まった台湾、タイ、カナダ、日本のトップクラスのAI先駆者たちが登壇。半日かけて、AI研究の最先端、社会実装の実態、人材育成の課題などについて濃密なディスカッションを繰り広げました。それは刺激的で楽しいイベントでした。

リプレーサブルでない場所

AI分野の人材不足は深刻です。そしてAI人材は、莫大な資金とデータを持つ世界有数の企業に集中しています。そう、日本企業がいくらAIを研究し実装しようにも、人材確保の面で圧倒的に不利なのです。

だからこそパネルディスカッションでは、「AI人材が世界のわずか数社に集中している中で、日本企業はどうやって人材を確保できるのか?」が議論されました。そこでRoyal Bank of Canada(RBC)のAI研究機関、ボリアリス(Borealis)AIのリサーチディレクターを務めるグレッグ・モリ氏の発言が衝撃でした。

「わたし自身、GAFAの1社で働いてたんです」とサラっと告白。そしてモリ氏は「それは本当に素晴らしい環境だと思いました。でもそこで私は、自分が代替可能(リプレーサブル)な人材だと感じていたんです」と、まるでインハウス広報時代の自分の声を聞くような発言が続きました。

「今は、銀行という、コンピューターサイエンティストが居るには奇妙な環境、と思われるかもしれないところにいます。そしてここは、わたしにとっては、ヘルスケアや環境など世界課題にも関われる、もっと大きなインパクトがある仕事ができる場所なのです」

これを聞いて、ふだん「どうしてあなた(ほどの功績ある研究者)が、Appierに入ったのですか?」という質問を受けるスン氏が「わたしもそう思います」と応えました。「Appierは、リサーチに特化している会社でも、SNSの会社でもありません。ニッチなAIテクノロジー企業です。が、非常に膨大なデータを持っています」「ここであれば、研究を超えて、データでビジネス課題を解決し、仕事を通してリアルに人の役に立つことができるのです」

バイネームがAIとPRの共通点

「うーん、まいった」と思わず私は舞台袖から、共感のあまり唸りました。我田引水で恥ずかしいのですが、私もまったく同感だからです。

AI同様に、PR分野も常にプロが足りません。広報を勉強したい、PRの仕事をしたいという人は多いのですが、企業広報を運営する実力と経験値があるPR人材はごくわずか。そこに、英語、IT、エージェンシーといった条件が加わると、もはやバイネーム(名指し)で評判がわかるほど、狭い世界です。

PRの仕事は、情報価値、メディアが情報を取捨選択する基準、人の考えと思いという暗黙知を、即座に判断して動く、即決力と行動力が必要です。そして、データでは見えないものを読み取る感覚(センス)も必要です。情報の匂いを嗅ぎ走り回る、そんな報道の裏方ですが、好きな人にはたまらない達成感があります。なぜなら、選りすぐった情報を伝え、感謝され、ゴールにたどり着くからです。

正しいことを正しいと言える

しかし世の中はそう甘くない。私が好きなPR会社の仕事は、企業内(インハウス広報)よりもある意味シビアです。クライアントであるインハウス広報さんに気持ちよくモチベーションを上げてもらい、その会社が目指すコミュニケーションを継続してもらえるように、パートナーとしての気配りが必要だからです。しかも、契約を切られたら売上が無くなるビジネスモデルです。そしてあいにく、PR会社のお給料は一般的に、超大企業クラスのインハウス広報の比較になりません。

ですがPR会社でなければ得られないものがたくさんあります。まず、さまざまな切り口で時代の波を最初に感じます。そしてクライアントから本音で相談を受け、真剣に考えて、自分と企業と社会の共通ゴールを目指します。社内の政治に振り回されることなく、正しいことを正しいと言えます。三方よしが自然にできる。これは、PR会社の中でも共同ピーアールだからこそだと思います。実際、Appierのクライアントもアカウントチームも最高です!

歳を重ねる、おカネを超える

それに、PR会社で歳を重ねることは、経験の蓄積を意味し、評価が上がります。若いときには見えない文脈や状況が読めるようになり、クライアントに頼られます。そして交渉力が上がり、経営者たちと議論でき、常に挑戦できます。だからこそ、女性でも歳をとることが恐くなくなります。

私は、私たちがPR会社としてクライアントからいただくおカネを超えることが必要だと思っています。時に秘書、時に友達、時にお母さんとして自分を制しながらクライアントとつきあい、信頼関係を保ち続けることが、成功と満足のカギです。そしてクライアントや仲間、同僚が卒業する時は、さびしくても、その成長や新しい門出を祝います。

そんな青臭いことを言っても許されるこんな環境だから、おカネを超えてこの仕事でワクワクし続ける、アツい人たちが集まります。

自分が自分らしく

モリ氏やスン氏が言ったように、誰もが大企業で輝ける訳ではないし、働きたい訳でもない。PR会社はもちろん、どんなに小さな日本企業でも、仕事と職場の魅力を伝え、それが働く人の欲している“自分が輝ける場所”にマッチすればチャンスはある。世界のトップ人材もそのユニークさに魅了されて集まってくる!と強く信じた出来事でした。

結論、いい転職の答えは、自分の心の中にあると思います。転職をするも、しないも、自分次第。自分が自分らしくいられる場所が、居るべき場所なのではないでしょうか。

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